記憶力が 1 bit 未満になった人の話
この記事は IQ1 Advent Calendar 2018 の22日目の記事です。
揮発する記憶
記憶が揮発します。 boolean さえ覚えておけないことがしばしばあり、日常生活に難が出ます。
この記事では、どのような状況で記憶が揮発しやすく、それが何故なのか、またどのように対処すればいいのか、経験と知見を記します。
記憶力が 1 bit ない人がそれに気付く事例
- 右に曲がるか左に曲がるかわからない
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免許合宿の教習での話。
教習所内で、次の丁字路で右か左どちらかに曲がるよう指示されたのですが、逆向きに曲がりました。 忘却までわずか十数秒。
- シャンプーを使ったかわからない
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風呂場での話。
いざ頭を洗おうとしてシャンプーに手を伸ばしたところで、ふと思います。 「今日はもうシャンプー使ったっけ……?」
なお、リンスを使ったかどうかも記憶できないので、頭を濡らしてしばらくすると「あれ、次に使うべきなのはシャンプーだっけリンスだったけ、それとももう両方とも済んでいるか……?」となります。
- 食事をしたかわからない
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今日既に昼食を食べたか、夕食を食べたか、思い出せないことがしばしば。 もちろん、何を食べたかも思い出せません。
- 自分の年齢が思い出せない
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皆さんわかりませんよね? 毎回計算してますよね?
- ちゃっく (000 ではない) を上げ忘れる
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あまりに上げ忘れるので、最近家を出てから道路で股間をまさぐって確認する変質者と化しました。 (しかも実際にちょくちょく忘れているので家の外で上げている)
- 物を持ち忘れる
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傘を店に置いていくこともありますし、学生証をコピー機に置いていって盗難されることもあります。
これは行動に関する記憶が追い出されるためで、たとえば「席を立とう」というタスクがキューにプッシュされた瞬間に、「傘を持つ」というタスクは追い出されて消失します。 同様に「印刷された紙を鞄にしまう」というタスクを意識に置いたその瞬間、「学生証をカードケースに戻す」というタスクは上書きされて消えます。 先に学生証を片付けるのも同じことで、その場合は印刷された紙を放置していくだけです。
1 bit 未満の記憶でどう生きるか
ここで IQ が2桁以上の人間は「メモを取る」とか安易に言ってしまうわけですが、そういう人々の大半には私の苦労は一生わからないんだろうなと思います。 IQ が 1 だと、メモを取るのを忘れるし、メモを取ったか忘れるし、メモの在処を忘れるし、メモの存在を忘れます。
- 右に曲がるか左に曲がるかわからない
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諦めます。 カーナビか何かを使いましょう。
なお私は免許取得以来数年間、自動車の運転席に一切座っておらず、ゆえにこの被害は発生していません。
- シャンプーを使ったかわからない
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外部記憶として「証拠」や「痕跡」を使います。
シャンプーを使うときは、泡をできるだけ壁や鏡に散らしましょう。 そしてシャンプーを使ったか忘れたときは、壁や鏡に泡があるか確認します。 泡があったらシャンプー使用済みです。
さて、これだとリンスを使用済みかはわからないままですね。 リンス使用の前後で、浴室の鍵を開閉しましょう。 鍵が開いていればリンス使用前、鍵が閉まっていればリンス使用後です。
なお、こういった印を付けること自体を忘れることもあります。 そうなったら、どうしようもありません。 諦めて最初からやり直しです。
- 食事をしたかわからない
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思い出そうとしても仕方ないので、少なめの食事を摂りましょう。
IQ1 から食事したかが思い出せないという嘆きのツイートが散見されますが,大学生なんだから自分で判断して食べたかったら食べればいいのではと思ってしまいます.食事を一回くらい余計に摂ったって大した問題じゃないでしょう.
- 自分の年齢が思い出せない
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誕生年はさすがにわかるので、西暦から引きます。 西暦が思い出せない場合は、仕方ないので PC かスマヒョを確認しましょう。
- ちゃっく (000 ではない) を上げ忘れる
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事あるごとにトイレに行きます。
チャックを上げ忘れるのは、決まってズボンを履いた後であることが経験的にわかっています。 ゆえに外に出る前に小用を足せば、用が済んだ後に必ずチャックを閉める動作を行うため、安心して外に出られるようになります。 小用後のチャック上げは羃等なので、何度でも用を足すといいでしょう。
ただし、家を出る前に大便をしたり、「#LATECH 確定なのでとりあえず駅に行ってから用を足そう」などと考えたが最後、チャックが開いたまま家を出ることになります。
- 物を持ち忘れる
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物を手放さないことです。
学生証をカードケースから出してはいけないし、カードケースはチェーンでズボンに固定しなければいけないし、チェーンは家以外で外してはいけません。 傘は折り畳みにして鞄に固定し、常に自分の手か鞄のどちらかと結合するように運用します。
どのような記憶が揮発しやすいか
事例を並べて考察した結果、「頻繁に値が変化する記憶は(どんなに情報量が少なくても)揮発しやすい」という仮説を立てるに至りました。 フラッシュメモリのように、何度も記憶を変更していくと、次第に記憶が定着しなくなっていくというわけです。
- 次にどちらに曲がるか: 交差点での右折・左折ごとに変化する
- シャンプーやリンスを使ったか否か: 一日ごとに変化する (しかもリセットとセットの2回)
- 食事をしたか: 3食だと日に6回変化する
- 年齢: 毎年変化する
- チャックを上げ忘れる: ズボンを履くたび変化する (日に1〜3度程度?)
- 物を持ち忘れる: 雨の日ごとなど (不定期、時期によるが月に数回から毎日まで様々)
おおよそ日に1〜2回以上の程度で変化する値が瞬時に揮発すると考えてよさそうです。
特に性質が悪いのがシャンプーやリンスの利用で、これらのフラグはセットのタイミングが明確でも、リセットのタイミングが極めて曖昧です。 風呂に入った瞬間にリセットとする手もありますが、入室は実際に頭部への何らかの操作を伴うわけではないので、うまくいきそうにありません。 リセットを意識すること自体を忘れておしまいでしょう。
また、年齢も1年に一度という低頻度ながら、「自分の年齢が記憶として定着した頃合いになってまた変化する」という嫌らしい性質を持っており、これが記憶の更新を困難にしています。 (まあ最近は1年経ってもついぞ自分の年齢を記憶できないまま終わるようになりつつありますが。)
何故記憶が揮発しやすいか
思うに、私は記憶が苦手なのではなく、「忘却」が苦手なのではないでしょうか。 たとえばシャンプーも、「シャンプーを使った」ことを忘れるのではなく、「シャンプーを使ったことはあるが、それが昨日だったか今日だったかはわからない」というような状況に陥っているような気がします。
或いは、時間と関連づける記憶の能力が弱いのかもしれません。 多くの人は、何らかの知識について「どこかで習ったことはあるが、いつ何の名目で習ったのかは思いだせない」といった忘却を経験したことがあると思います。 私は、これが激しいのかもしれません。 特に、頻繁に更新される情報については、最終更新がいつだったかというのも重要ですから、いずれにせよこの種の忘却は致命的になるわけです。
もちろん、純粋に意識できる記憶の容量が小さいというのもあります。 急かされて「急がなければ」などと思ってしまったが最後、何を急ごうとしていたか、急ごうとする前に何をしていたか、すっかり忘れてしまいます。
まとめ
- 諦めは肝心です。 羃等性を活用しましょう。 何度やっても問題ないこと(たとえば小さな食事、たとえば小用)を、何度でもするようにします。
- 外部記憶に頼りましょう。 年齢や西暦は無理に思い出す必要はありません。
- 痕跡を残すのも有効です。 「泡が残っているのだから、(リンスでなく)シャンプーを使った後に違いない」というように、忘れても後から正解を推論できるように痕跡を残します。 思い出すのではなく、考えるのです。
- メモは無駄です。 メモを取るという行為にまつわる余計な記憶域が要求されるだけですし、「メモを取らないと」と意識した瞬間に「何をメモしようとしていたか」を忘れるのがオチです。
- 頻繁に切り替わる情報に警戒しましょう。 可能なら、何らかの不変条件を用意して対応します。 「定期券を手に持つか持たないか」だと頻繁に変化してしまいますが、「定期券は必ずカードケース内にあり、カードケースは必ずチェーンでズボンに繋がれている」という不変条件を用意しておけば、意識すべき変化はなくなります。
- この記事に書いてある事例は全て実話です。